海外から見た日本 ~ニューヨークでのMBA生活を通して

僕がMBAで学びたいと思った大きな理由の1つが、「自分が30年間生まれ育った日本という国を外から見る」ことでした。この点について(まだ渡米後5か月弱しか経っていませんが)これまで感じたことを書きたいと思います。

まず、日本は「本当に本当に素晴らしい国」だとニューヨーク生活を通してつくづく実感します。安全で便利で、そして何より食べ物が美味しい。MBAのオリエンテーションでクラスメート全員自己紹介を兼ねて好きな食べ物を紹介する場面があったのですが、アメリカバックグラウンドのクラスメートがことごとく「ピザ、ハンバーガー」を連呼していたのは衝撃でした。。が、実際にニューヨークで生活しているとその感覚も分かる気がします(僕達夫婦の現時点の仮説は、「そもそもアメリカ人は日本人ほど食に興味やこだわりがない!」です)。

そして、MBA生活を通して感じたのは、「日本の存在感は依然として世界の中でも際立っている」ということです。色んな授業を受けていてアメリカ以外の国が単体で話題に挙がるのは、日本か中国ぐらいでその割合も日本の方が若干多い程です。ドイツやイギリスなどはヨーロッパとしてまとめられてしまいますし、アジア・南米・アフリカで発展を遂げている国に関しても個別国の話ではなく大陸・地域として話に出されることがほとんどといった状況です。

特に印象的だったのは、Global Economic Environment(マクロ経済)の授業で日本で長期化するデフレや黒田総裁就任後の日銀の大胆な金融政策、日本の高齢化社会問題や労働生産性の低さが度々言及されたことと、Capital Markets & Investments(資本市場と投資)の授業で1950年から2000年後半にかけて最も株価が成長した国はアメリカでもヨーロッパでもなく、1990年代に大きなバブル崩壊を経験した日本であるという事実(一方でボラティリティはアメリカより日本が高かった点に注意)が僕含む学生の関心を引いていたことですが、その他にもReal Estate Finance(不動産ファイナンス)の教授が日本の不動産マーケットに注目していたり(実際に当教授は日本にいくつか不動産を所有しているとのこと)、Maketingの授業でアフラックの日本でのCMが取り上げられたりと、アメリカでここまで日本の話を聞くことになるとは留学前は全く想像していなかったです。

世界で60位程度の国土しかなく、天然資源も限られており、かつ第二次世界大戦敗戦国の日本がここまで世界で存在感を持てるようになったのも、諸先輩方の並々ならぬ努力の結晶であり、感謝しなくてはいけないと(世代間格差の問題が騒がれている昨今ですが)授業を聞きながら実感する日々です。

一方で、現在の中国・インドの発展を考えると、あと5年、10年するとこの日本の立場が中国やインドに取って代わられてしまうのかな、そうなるとこれからアメリカに来る日本人学生は真の意味でPassing Japanを経験することになるのかな、などと勝手に寂しい思いに駆られてしまいます。もちろん世界の中での存在感=日本人の豊かさとは一概には言えないですが、世界の中で日本がこれからどの様な役割・立ち位置を果たしていくのかは考えなくてはいけないテーマだと思います。

そして、失われた20年と言われる時代を経験した今でも、日本の真の正念場はこれから来る5~10年なのではないか、というのが僕の結論です。日本で生活している時は、勝手に日本の将来は暗いと決めつけていた自分が情けない限りです(誰の言葉か忘れましたが、「楽観者は基本的には誤っており、悲観者は基本的に正しい。しかし、真に何かを成し遂げるのは常に楽観者だ」という言葉を大事にしています)が、僕も母国に対する悲観一色の見方を正し、どの様にこの素晴らしい国の発展に少しでも貢献できるか、大袈裟ですがまずは僕一個人としての課題です。

世界、少なくともアメリカの一定の人々は日本のこれまでの経済発展や独自の歴史・文化、その根底にある日本人の勤勉性や団結力、感受性など様々な側面を認識・評価すると同時に、差し迫っている課題(長期化するデフレ、人口減少/高齢化社会、生産性向上など)に世界各国に先駆けてどの様に立ち向かうか注目しています。これだけは日本人として絶対に忘れてはいけない事実だと思います。

日本という国に関して、MBAで過ごす時間がここまで様々なことを感じさせてくれるとは思っていなかったので、色んなMBA卒業生の方がMBAの価値として目に見えない人生観の変化だと仰っていたのがようやく少し腹落ちした気がします。卒業するまでにMBA生活で感じたことをより深化させ、そしてどの様に将来の行動に活かしていけるのか、自分なりの答えを探していきたいなと思います。

(余談)今日は冬休みを利用してウユニ塩湖に旅行に来ていたのですが、突然チリ・サンディエゴから来たアメリカ人とスペイン人のカップルに声を掛けられ、「僕達は本当に日本が大好きだ。昔大阪の〇〇市に住んでいたのだが、特に日本の食事は世界一だ。僕は日本語をほとんど忘れてしまったのだが、彼女は今でも話せるよ。・・・」と滔々と語られました。こんな事を言ってもらえるのも日本人ならではなのかなと嬉しくなった一幕でした。

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